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地植えの梅の木・花ウメの特徴・梅の木がある庭(植栽・剪定・手入れ)
(梅の植栽 和風庭園の梅の木)
ウメ(梅)は、バラ科サクラ属の落葉高木の果樹です。ウメ(梅)の花は、冬の風がまだ冷たい1月下旬頃から咲き出し、3月上旬にかけてが見頃です。花の色は、白、ピンク、紅色といった多彩な花色があります。
ウメ(梅)は、大きく分類すると、花梅(はなうめ)と実梅(みうめ)があり、花を観賞するのは花梅(はなうめ)で、食用にする果実を採ることを目的とする梅を実梅(みうめ)と呼び区別されています。
ウメ(梅)は、花の美しさ、実の付きやすさ、背丈が高くなる品種や、庭木に適した品種など、ウメは品種が豊富です。
万葉歌に多く詠まれた梅
日本最古の和歌集(万葉集)全4516首のうち、植物を詠んだ歌が約1500首あります。最も多く短歌に登場する植物は、「ハギ」が141首、次いで多いのは「ウメ」118首、「マツ」79首、「タチバナ」68首、「サクラ」50首です。ウメ(梅)は、サクラ(桜)よりも多く詠まれています。
庭園の散策
植物は季節によって異なる風景を見せてくれます。日本庭園をめぐる際は、一味違った目線で観賞してみると、情緒(じょうちょ)たっぷりなひとときを楽しめます。
万葉集で詠(よ)まれた「ウメ」118首の中でも、特に「梅にうぐいす」や、「月夜に梅」を重ねて詠んだ(よんだ)歌などは、自然の美しさだけではなく、季節の移ろいを伝えるとして、現代においても多くの人々を惹きつけます。
(梅とうぐいす)
(月夜に梅)
観賞の違い、ウメ(梅)とサクラ(桜)
ウメ(梅)とサクラ(桜)は、両方とも花を観賞する木ですが、咲き始めから散るまでの観賞ポイントが異なります。2月、春に先駆けて咲くウメ(梅)の観賞は、チラホラ咲きを楽しみ、切って育てる手入れされた枝ぶりも観賞する花木です。4月、春になると一斉に咲き誇るサクラ(桜)の観賞は、満開期の見事な花ぶりが楽しまれます。
早春を告げる花木、ウメ(梅)の栽培
ウメ(梅)は春の訪れを告げる「春告げ花」ともいわれます。花ウメは花の形や色、幹の形や枝ぶりを観賞し、実ウメは果実を収穫して梅干しや梅酒などにして味わいを楽しみます。
ウメ(梅)は雌雄同花(しゆうどうか)で、雌雄の区別がありません。ひとつの花に雄しべ(オス)と雌しべ(メス)が存在しています。
ウメ(梅)の性質は、ほとんどが「自家不結実性」です。
ウメ(梅)は「自家不結実性(じかふけつじつせい)」といって、自分の花粉では実がならなく、同じ品種の花粉で受粉しても実がならない性質を持っています。ウメ(梅)を実ウメとして結実させるためには、開花時期が同じで花粉の多い2品種以上を近くに植えます。
(実ウメの木)
また、ウメ(梅)は、違う品種であっても特定の品種の花粉を受粉した場合は結実しない「交配不親和性(こうはいふしんわせい)」の品種もあり、1本でも受粉結実する品種もあります。ウメ(梅)は品種によって性質が異なり、「実ウメ」として育てるには品種選びが重要になります。
(実ウメの果実)
実ウメ(実梅)は庭木でありながら収穫も楽しめ、実用性の高い花木です。春には花見、夏には収穫の喜びを味わえます。庭の一角でも栽培できます。
(実ウメの栽培)
1本でも実がなる、花も美しい八重咲きの「花香実(はなかみ)」
ウメ(梅)のほとんどが「自家不結実性(じかふけつじつせい)」の性質の中で、1本でも結実する「花香実(はなかみ)」は、自家結実性が高く、その名の通り花も美しく、淡紅色の八重の花が咲き観賞価値が高いことでも知られています。
他にも1本で実がなる品種は、果実が小ぶりの「鶯宿(おうしゅく)」や「月世界」が有名です。
(淡紅色の八重が咲くウメの花)
※1本でも結実する品種であっても、受粉樹を近くに植えることをおすすめしています。
(実がついたウメの木)
花ウメ(花梅)の植栽
花を観賞する花ウメ(花梅)は、庭園や公園、お寺や神社などにも植えられています。花ウメで育てる際は花が美しい品種を選びます。花の観賞を目的とする場合は受粉樹の有り無しを問わず、1本だけでも花が咲きます。
(花ウメ(梅)の栽培)
ウメ(梅)は落葉高木です。大きく成長する木ですが、剪定で小型に仕立てることもでき、屋敷の庭や旅館、茶室がある庭や日本庭園など中庭でも育てられます。
(初春の庭を華やかに彩る、花ウメ(梅)がある庭)
庭で育てる花ウメ(花梅)の樹高・背丈
ウメ(梅)はバラ科サクラ属の落葉高木です。ウメの木は、景観用として広く植栽されています。ウメの木は大きく育ち、背丈が10mにもなります。一般的なお庭や中庭で育てる場合は、3~5m程度の高さで管理していきます。
花ウメ(花梅)と実ウメ(実梅)の寿命
花ウメの寿命は長く、樹齢は70~100年といわれています。環境や手入れが良いと200年以上生きることもあります。また、実ウメの寿命は、花ウメに比べると短く、実が多く取れる寿命は約25年程度とされています。早い段階で若い枝に更新していきます。
古株(古梅)になると見事な枝ぶりになる花ウメ(花梅)
ウメ(梅)の樹皮は、老木になると黒っぽくなります。手入れを施したウメは100年以上育ち、古梅にもなると風格が増し、湾曲(わんきょく)する見事な枝ぶりに成長します。
ウメ(梅)の花色・花びらの形状
ウメ(梅)の花色は豊富にあり、白、淡紅、紅、濃紅色まで多くの品種があります。花びらの形状も豊富で、丸みのある花びらやフリルのようになった花弁(花びら)、一重咲きや八重咲き、一輪の中に紅白が混ざる「絞り咲き(色が模様のように斑入りになった花びら)」など、見るものを魅了します。
ウメ(梅)の「葉芽」と「花芽」の見分け方
冬のウメ(梅)の枝には、2つの芽が出てきます。丸みを帯びたカタチをしているのは「花芽」で、細長く尖っているのは「葉芽」です。
ウメ(梅)の花芽
ウメ(梅)の花芽は、1節につき1個です。
ウメ(梅)の葉芽
ウメの葉芽は、1節に1~3個つき、両脇の副芽は小さいです。
ウメ(梅)の開花時期・花の付き方
ウメ(梅)は1~3月頃、葉に先立って花が咲きます。ウメ(梅)の花は、花の茎(花柄:かへい)が短く、花や蕾(つばみ)が枝に付いているようにも見える可愛らしい付き方をします。
ウメ(梅)の散り方・散りゆく姿
ウメ(梅)の咲きはじめは品種によって異なり、早咲きの品種では1月から花がほころび始め、遅咲きの品種は4月頃まで楽しむことができます。ウメの花の散り方はゆったりとしており、静かにぽろぽろと、花びらが一枚ずつこぼれ落ちるように散ります。ウメの散りゆく姿は、春の情景とともに人々の心に深い余韻を残す奥ゆかしさがあり、小ぶりながらも多くの人を魅了します。
地植え(庭植え)の花梅・植え付け・盛り土・水やり
地植え(庭植え)するウメ(梅)は、苗木で植え付けるのが一般的です。梅の植え付け適期は12月から2月です。ウメを植え付ける際の「植え穴」は、根を広げて植える大きさに掘ります。ウメの植え穴は、大きく深く掘る必要はありません。植えてから1~2年間は 水を吸い上げる力が弱く、根がまだしっかりと張っていないため、土が乾いたらたっぷりと水を与え、水切れを防ぎます。とくに、苗を植え付けた直後は、根が切られているため、水やりが大事になります。
(梅の木の植栽 植え付け)
地植え(庭植え)をする場合、植え付ける前に腐葉土や堆肥を混ぜて土壌を改良することで、根の張りが良くなります。
植えて2年目以降の水やり
植えて2年目以降のウメ(梅)の水やりは、基本的に自然の雨に任せますが、日照や雨の有無に応じて、季節や天候によっても水やりの頻度を調整します。何日も雨が降っていなく土の表面が乾いているときは水やりをします。地植えしたウメは、植え付けから3~4年で花が咲きます。
(若木の梅)
土壌改良、盛り土をしたウメ(梅)の木
ウメ(梅)は、日当たりと水はけが良い肥沃(ひよく)な土壌を好み、湿地(しっち)を嫌います。日当たりが悪く湿気が多い場所では枯れてしまいます。水はけが悪い場所では、盛土(もりど)をして植栽します。植え付け前によく耕し、盛り土は地上部にこんもりと盛るようにします。
(盛り土をしているウメ(梅)の木)
花ウメ(花梅)の植え付け・支柱を立てる
ウメ(梅)の木は、浅根性(せんこんせい)です。植え付け時の「支柱(しちゅう)」は、必ずしも添えなければいけないという樹木ではありませんが、 ウメ(梅)は根が浅く成長を支柱で助けます。風が強くあたる場所に植える際は、ウメが倒れないように苗を支柱に固定しておきます。
(斜めに傾いている梅の木)
(強風で倒れた梅の木)
(若木に支柱を立てた梅の木)
花ウメ(花梅)を育てる場所、日当たりと土壌改良
ウメ(梅)の移植や植え付け適期は12月から2月です。ウメは日光と水はけがよい良く肥えた土を好みます。育てる場所は、建物の陰や他の植物の木陰になる場所は避け、枝の広がりを確保できる日当たりの良い場所で、水はけが良い肥沃(ひよく)な土で育てます。
「梅の花付きが悪い(少ない)・・・」、「梅の木が枯れてきた・・・」という場合は、 大半が剪定や手入れの仕方、日当たりが原因になっていることが多いです。
(花付きが悪い梅)
ウメ(梅)の春夏秋冬・季節ごとの手入れ
ウメ(梅)は季節に応じた手入れをして育てます。春は芽吹きや花の様子を観察し、枯れ枝や弱々しい新芽を取り除きます。夏は高温期に徒長枝の整理を行い、適度な水やりを行います。秋は落葉します。病害虫予防のために落ち葉を清掃します。冬は本格的な剪定作業と肥料の追加を行います。ウメの手入れを通して四季を感じることができます。
(梅の手入れ)
(梅の蕾(つぼみ))
(梅の開花)
ウメ(梅)の木は落葉性で、四季折々の美しさを楽しむことができます。
ウメ(梅)の芽吹き
ウメ(梅)は昨年伸びた枝に花が付き、早春のころ、ウメ(梅)の枝にぷっくりと丸みがある蕾(つぼみ)が膨みはじめ、ちらほらと開いていきます。
短枝に沢山の花が付くウメ(梅)
ウメ(梅)は短果枝(たんかし)です。短い枝に沢山の花をつけます。
葉よりも花が先に開くウメ(梅)
ウメ(梅)は葉よりも先に花が開きます。
花が落ちるまで葉がなく枝がよく見えます。
観賞されるウメ(梅)の枝や樹形
ウメ(梅)は花だけでなく、枝ぶりや樹形も観賞する花木です。
ウメ(梅)の枝・成長
ウメ(梅)は枝が広く張り、斜上(または真上)方向に伸びていきます。
ウメ(梅)の枝・先端
ウメ(梅)の枝は、先端が尖って(とがって)いるように細くなるのも特徴的です。
ウメ(梅)の花後にお礼肥
ウメ(梅)の花後は、お礼肥えます。4月頃が適期です。定期的に土の管理と肥料を施すことで元気な梅の木を育てることができます。
ウメ(梅)の葉
ウメ(梅)の葉は、卵形をした広い葉が互生につきます。葉の縁(ふち)は二重鋸歯です。葉の先端が尖っているのもウメの葉の特徴です。
ウメ(梅)は、冬に落葉する落葉樹(らくようじゅ)です。
梅の木は、秋から冬になるとすべての葉が落ち休眠に入ります。
ウメ(梅)の寒肥え
ウメ(梅)の肥料やりは、12月~1月に寒肥えを行います。株元に数か所の穴を掘って埋めるように施します。
枝の手入れ・剪定
ウメ(梅)の剪定後、太い枝を切った際には切り口に癒合剤を塗り、木の健康を守ることが重要です。
花ウメ(花梅)の品種選び
花を楽しむ「花ウメ」の代表的な品種は、紅梅の代表格「鹿児島紅」や、1本の木に赤と白が混じた「思いのまま」などはよく知られています。
ウメ(梅)の剪定に適した時期(夏剪定・冬剪定)
ウメ(梅)は芽吹く力が強いです。剪定して樹形をつくっていきます。ウメ(梅)の剪定は、夏剪定と冬剪定の年2回を基本に行います。ウメ(梅)の剪定に適した時期は、夏剪定は、6月下旬~8月中旬、冬剪定は、葉が落ちて休眠期に入る11月下旬~蕾が付く1月中旬までが適期です。短い枝は翌年に花が咲きやすいため、切りすぎないよう注意します。
夏剪定 (6月下旬~8月中旬)
ウメ(梅)の木の夏剪定は、6月下旬~8月中旬に行います。花後は勢いよく新枝が伸びていき、7月頃になると葉が茂り、枝が込み合ってきます。
(枝葉が茂った夏の梅の木)
夏剪定では、伸びすぎた枝を整え、樹冠に光が均等に行き渡るように混み合った枝を間引いて風通しをよくしておきます。通風性を高めることで害虫や病気の予防になります。
(枝が混み合っている梅)
ウメ(梅)の枝を切る際は、1つの枝に5~6芽残して不要な枝を間引きます。その際、「内芽」で切ると徒長枝が出やすいことから「外芽」で切るようにします。
(間引き剪定で、内部に陽が入る夏の梅の木)
冬剪定(11月下旬~1月中旬)
ウメ(梅)の冬剪定は、葉が落ちて休眠期に入る11月下旬~蕾が付きだす1月初旬が適期です。冬剪定では、古くなった枝や不要な枝を間引き、密集している部分を整理して風通しを良くします。内側に向かって生えている枝は取り除き、強く刈り込んで全体の樹形を整えます。長い枝には花芽が付きにくいため枝の根元から切り詰めます。
(冬剪定した梅の木)
強い剪定にも耐えられるウメ(梅)
ウメ(梅)は、切り口の回復が早く、太い枝を切る強い剪定にも耐えられます。枝を強く刈り込む際は、落葉後に行います。ウメの木質は硬いです。太めの枝を切る際はノコギリを使います。
(太い枝の剪定)
ウメ(梅)は、剪定しないと枝がどんどん増えて見苦しくなります。
ことわざ「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」
ウメ(梅)は剪定次第で翌年の花付きが変わってきます。 「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」という諺(ことわざ)は、サクラ(桜)の木は切らないではなく、サクラ(桜)とウメ(梅)は花姿も咲く時期も似ていますが、切り方(剪定方法)の違いを意味しています。
(細い枝が混み合う梅の木)
ウメ(梅)は短い枝に花芽が多く付き、太くて長い枝には花芽が付きにくくなります。枝を切ると沢山の花を咲かせることができます。
(不要枝を切り、花が密に咲いている梅の木)
花ウメ(梅)の樹形・仕立て方
花ウメ(花梅)の木は、花の観賞を目的に育てます。花ウメとして育てる梅は、若いうちから伸ばす枝、切る枝を定め、沢山出てくる小枝を切り、風通しをよくするための間引き剪定を行い、樹姿の美しさも整えていきます。
(低く育てる梅の樹形)
(高木に育てる梅の枝)
樹形内部に空間を作る花ウメの剪定
花ウメ(花梅)の木は、樹形内部に空間を作るように枝を切って育てます。古い枝には花芽がつきにくくなります。枝が茂り過ぎると日が当たらない下の方(内部)の枝が枯れてきます。不要枝や混み合っている枝を間引き、枝数が少ない状態にして梅の趣を楽しみます。
庭で育てるウメ(梅)の木
梅の木は落葉高木で樹高は5〜10mに成長します。中庭など限られたスペースで庭木として育てるウメ(梅)の樹高は、2m~3m程度を維持するように剪定で高さを調整します。
横広の樹形に仕立てるウメ(梅)の木
ウメ(梅)の枝ぶりを楽しむには、背丈をややひかえ、主枝を広げた横広の樹形に仕立てます。
ウメは小枝が沢山伸びてきます。横広の樹形にするには、状態の良い枝を3~5本程度を残して、主枝の樹冠が広がるように他の枝を切り落として上に伸びる枝も調整していきます。
ウメ(梅)の自然樹形は、枝の流れの優美さ、曲がりくねった幹にこそ味わいがあります。
「く」の字に曲がりくねった枝
ウメ(梅)の枝は、芽のすぐ上で切ると、その芽から新しい枝が伸びてきます。それを繰り返して曲がりくねった枝をつくります。老木になる頃には、「く」の字に曲がりくねった太い幹と、ピンと伸びる枝が美しい姿になります。
長い枝は枝元から切ります。
ウメ(梅)は枝を切ることで花付きが良くなります。梅の木を剪定しないでいると毎年1m以上にも伸びてくる長い枝と、主枝から伸びてくる小枝が絡み合うように伸び、花付きも実付きも悪くなります。梅の枝を切る位置は、枝の根元(分かれ目)で切ります。
長い枝に花芽が付きにくいウメ(梅)
花芽が付かない枝?!
ウメ(梅)は短い枝に花芽が付き、長く太い枝には花が付きいくくなります。
(長い枝に花芽がついていないウメの枝)
ウメ(梅)の花を沢山咲かせたい場合は、真上に立ち上がった長い枝(立ち枝、徒長枝)は除去し、短枝と中枝を多くすると沢山の花が密に付きます。
同じ位置で剪定を繰り返したウメ(梅)
瘤(こぶ)?!
ウメ(梅)の枝を毎年同じ位置で刈り込んでいると、切り口が瘤(こぶ)のように太くなっていき、見栄えも悪くなります。ウメは自然な樹形が美しく、枝が同じところから放射状に伸びている姿はウメには不向きです。
ウメ(梅)の枝は斜めや上に伸び、1年でかなり伸びます。
切り口の枝コブがボコボコと目立ってきた場合は、瘤(こぶ)を含めて切り戻しを行います。新たな枝を芽吹かせて自然な枝張りとなるよう仕立て直しできます。
主幹をバッサリ切ったウメ(梅)
間延びした長い枝?!
梅の木を小さく育てるには、主幹を切って芯止めする方法があります。樹木の頂点にあたる最も高く上に伸びる枝を切ります。主幹は切るだけですが、残った枝が間延びしたように長く目立ってしまいます。
幹から分かれた長い枝のバランスが悪い時は、1/3程度に切り、小枝の剪定は一時的に控え、上へ向かって伸びてくる新しい枝を残していきます。
(主幹を切って芯止めした梅の木)
ウメ(梅)は、先端を切り戻し、混み合った枝を間引いて枝分かれした樹形に整えていく樹木です。
また、太い枝を取り除いた場合は、切り口に癒合剤を塗ります。肥料の追加などで生長を促進させます。
葉が多く茂るウメ(梅)
葉ばかり?!
ウメ(梅)の枝は、新たに伸びた枝の先端に翌年に咲く「花芽」が付き、古い枝には「葉芽」が多く付きます。
ウメ(梅)の夏は、日光の妨げとなるほどよく茂ります。
古い枝を取り除くことで新しい枝が形成され、花付きや果実を増やすことができます。
ウメ(梅)の分類・園芸品種の系統
ウメ(梅)は江戸時代の園芸ブームで品種改良が盛んに行われ、現在、花梅(はなうめ) だけでも300品種以上の品種があり、実梅(みうめ)を含めると500品種はあります。
ウメの園芸品種の系統は、大きくわけて「野梅(やばい)系」「緋梅(ひばい)系」「豊後(ぶんご)系」の3つに分かれます。
梅の木を植える際は地域の気候に応じた品種選びを工夫します。例えば、寒冷地では耐寒性が高い「豊後系」の品種を選ぶのが適しています。
野梅系(やばい系)
野梅系(やばい系)は、原種(野生)に近い性質で、ウメの半分以上を占める品種です。白色系の花が多い、枝の数が多い、枝が細い、小枝が多い、葉が小さめ、香りが強め。
緋梅系(ひばい系)
緋梅系(ひばい系)は、野梅系から変化した品種です。紅色(べにいろ)や緋色(ひいろ)の品種が多い、幹や枝の軸も紅色を帯びている。
豊後系(ぶんご系)
豊後系(ぶんご系)は、アンズやスモモとの交雑でできた(雑種)品種です。花色はピンク系が多い。花の香りは控えめ、枝の数はやや少なめ、小枝が太め、果実が大きめ、葉は大型、耐寒性が高い、遅咲き、果実を目的とした栽培に適している、酸味が少なめ。
実梅(みうめ)に適した代表的な品種
ウメ(梅)は園芸上、実梅(みうめ) と花梅(はなうめ) に大別され、庭木の多くは花を観賞する花梅(はなうめ)で、実梅(みうめ)は果実の収穫を目的とした梅のことです。ウメ(梅)種類が豊富にあり、実ウメに適した品種だけでも200種類はあります。
(ウメの収穫前の枝)
(梅干しづくり)
実梅(みうめ)に適した代表的な品種は、「南高梅」や「白加賀」が有名で、梅酒作り向けとしてよく知られています。
実ウメの定番品種 南高梅(なんこううめ)
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関東で多く栽培される伝統梅 白加賀(しらかが)
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独特の酸味が魅力 鶯宿梅(おうしゅくうめ)
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鮮やかな色と味わい 紅映梅(べにさしうめ)
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小粒な果実 竜峡小梅や甲州小梅
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実ウメ(実梅)の収穫・楽しみ方
「豊後系」のウメ(梅)は果肉が多く、水分や香りが豊かで梅酒や梅干し作りに適しています。
(梅干し入りおにぎり)
(梅の栽培)
苗を植えてから収穫まで
実ウメ(梅)で育てるウメは、苗を植えてから約3年から5年で実がつき始めます。栽培条件や育てる環境、近くに植えている受粉樹の品種によっても異なりますが、ウメの収穫・実を楽しむには、根気よく育てていきます。
(実ウメの若木)
(ウメの果実の収穫)
実の形状
ウメ(梅)の実は、直径2~3cmの球形で、片側に浅い溝(みぞ)があるのが特徴的です。
実の色は、青色から黄色へ熟していきます。
ウメ(梅)の実は、花後すぐにつき、5月は青色です。青梅の収穫は早い時期に行います。
ウメの実は、6月頃になると黄色に熟していきます。
梅の実は、熟成加減によって風味が変わります。
緑色の実の収穫
緑色の青い梅は、梅酒や梅シロップ、梅ジュースに向いています。※青い梅を梅干しにすると皮や実が堅いです。
追熟(ついじゅく)
青いうちから早めに取って、日陰に置いておくと1~2日で黄色く熟します。
黄色く熟した実
黄色く熟した実は、梅干しやジャムづくりに向いています。
ウメの加工
用途に合わせて、小瓶に分けると味わいを楽しめます。
初夏に降る長雨、「梅雨(つゆ)」の語源は、ウメ(梅)
雨が長く続く「梅雨(つゆ)」の語源は、 ウメ(梅)の実が成る頃に降る雨であることに由来します。ウメ(梅)の収穫時期は、あじさいが咲く頃、梅雨に入ってからです。
(ウメの収穫前)
ウメ(梅)の果実は落下します。
ウメ(梅)の収穫時期は6月~7月が目安です。 青梅の収穫は6月初旬頃から始まり、黄色い梅の収穫は6月下旬頃から始まります。枝に残ったままの実は、黄色く熟したあと自然と落下します。
(ウメの実の落下)
ウメ(梅)の若木の頃は、木の成長を助けるため実を手作業で落とすこともしますが、年々月日を重ねる毎に実を支える枝へと成長していきます。
古木や老梅の木に着生する、白いカビのような苔は「ウメノキゴケ(梅の木苔)」
古木や老木になった「梅の木」の樹皮に多く見られるコケのような白い葉状のものは「ウメノキゴケ(梅の木苔)」といって、地衣類(ちいるい)の一種です。地衣類(ちいるい)は、樹皮などの表面に着生して生育している生物です。
(古梅の枝に白いコケが点在?、ウメノキゴケ(梅の木苔))
※ウメノキゴケ(地衣類)を除去するには、「高圧洗浄機」や「薄めたお酢を散布」が有効な手段です。ウメノキゴケは強く張り付いているわけではありませんので、比較的簡単にはがすことができます。
(ウメノキゴケ(梅の木苔))
ウメノキゴケ(梅の木苔)の着生が古木やウメの老木によく見られるのは、樹皮の状態です。樹皮がひび割れていたりすると湿気を含みやすく、ウメノキゴケに適した環境になります。またその姿は、古木ならではの風情が引き立った自然美の現れとして、生け花や苔庭などにも加工されています。
(ウメノキゴケ(梅の木苔)が着生している梅の木)
ウメノキゴケが着生している「苔梅(コケウメ)」は、長寿の証として「縁起がいい」とされ、お正月飾りなどにも使われています。
ウメ(梅)は中国から渡来した植物です。
ウメ(梅)の原産地は中国です。長江流域を中心にウメの野生種が存在していたとされ、そこから栽培種が発展した説がある中で、一方では中国には栽培種しかないという説もあり、栽培起源は曖昧です。ウメは中国から日本に渡来し、その後、日本、朝鮮、中国で栽培されたものが原種とされています。
梅の原産地は中国
中国でのウメの歴史は古く、2000年以上前から薬用として栽培されてきました。のちに食材や花の観賞に用いられるようになりました。
中国から日本に渡来
ウメが日本に渡来したとされるのは8世紀(奈良時代)以前に、遣唐使(けんとうし)が漢方薬として持ち帰ったと伝えられています。
梅の古名は「ムメ」、梅の名前
日本の江戸時代の頃は、ウメ(梅)のことを「むめ(mume)」と呼び、英語では「plum(プラム)」や「Japanese apricot(ジャパニーズ・アプリコット)」と呼ばれていました。
ウメの学名
ウメの学名は、Prunus mume(プルナス ムメ/プルーヌス ムメ)です。江戸時代にドイツ人医師によって付けられました。当時の日本ではウメのことを「ムメ」と呼んでいたことで、学名にムメ(mume)をとり入れたようです。
ウメ(梅)と似ている花木・果樹
花ウメ(梅)の花姿や樹形は、桜や桃、アーモンドに似ています。実ウメの品種には、アンズやスモモとの交雑品種もあります。
ウメ(梅)と似ている花木
ウメ(梅) | サクランボ(桜ん坊) | モモ(桃) | ||
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ウメの特徴:開花は主に1月下旬~4月。花は丸みを帯びた5弁の花びらを原種とし八重咲き種も多数ある。葉よりも先に花が開く。葉の縁に細かい鋸歯がある。 |
サクランボの特徴:開花は3月下旬〜4月中旬。桜に似た白い花を咲かせる。初夏には赤や黄色の甘い果実を付ける。実の熟期は5月下旬。受粉樹として広く利用される。 | モモの特徴:開花は3月中旬~4月下旬、花が咲く季節の3月3日を「桃の節句」と呼ばれる。花は薄い淡紅色の花が開き、花弁の先がとがっている。花と葉が同時に咲く。 |
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(ウメと花も樹形も似ている花木、モモ(桃)・花モモ))
ウメ(梅)と似ている果樹
スモモ(李/酸桃) | アンズ(杏子) | アーモンド | ||
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スモモの特徴: 開花は3~4月。収穫時期は6月下旬~8月。花は桃より小さく花弁は一重の白花のみ。白い花が散形状に咲く。桃に比べ酸味が強いことから酸桃となった。 | アンズの特徴:開花は3~4月。淡桃色の花が開花する。葉腋に花芽を1個つける。オレンジ色の実をつけ成熟期は6~7月。耐寒性が強く比較的寒冷な地域に適している。 |
アーモンドの特徴:開花は3月中旬から下旬。桜より少し早く咲く。柄が短く、花が開いたあと雌しべが急速に成長して 5月には果実がなる。果実は平べったい形をしている。 |
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(ウメと花も樹形も似ている果樹、アンズ(杏子))
枝がしだれる枝垂梅(しだれうめ)
ウメ(梅)の中で、枝が長く直線的に伸び、枝垂れる(しだれる)品種を「枝垂梅(しだれうめ)」といいます。しだれ梅は、枝垂れた枝が風に揺れる独特の樹形が美しい花木です。その繊細で優雅な姿は多くの人々を魅了します。
(垂れる枝が美しい、しだれ梅)
枝垂梅(しだれうめ)の花は白色やピンク色が多く、開花すると樹全体が花に覆われ、圧巻の景観を楽しむことができます。枝垂梅(しだれうめ)には、料亭や旅館、庭園や寺などにも植えられています。
(しだれ梅の花)
しだれ梅(枝垂れ梅)の剪定
しだれ梅も一般の梅と剪定時期は同様です。 花後(葉が出る前)から夏にかけて勢いの良い枝が伸びていきます。 花後の剪定では内部に日陰を作らないように風通しを良くし、枝を1/3~半分くらいの長さに切ります。落葉すると枝のしだれ具合がよくわかります。樹形を整える剪定は休眠期(11月~1月頃)に行います。
山崎造園は、庭木の剪定・手入れ、植栽、庭の増設・ブロック塀の撤去など庭全般の工事も行っております。梅の植栽から剪定、放置している梅の回復、枝が伸びて見苦しくなった樹形の仕立て直し、成長し過ぎて手に負えなくなった梅の木などお困りの際はぜひご相談ください。
ウメ(梅)の木は日本庭園の象徴的な存在として、多くの庭木や花と相性が良いです。例えば、椿や松などの常緑樹と組み合わせると、梅の花がさらに際立ちます。
ウメ(梅)の病気・害虫予防・手入れ
ウメ(梅)の栽培では、害虫がつきやすい点に注意が必要です。アブラムシやカイガラムシなどの対策としては、早めに発見し駆除することが重要です。家庭では手摘みでの除去も効果があります。
害虫予防
ウメ(梅)の木には、夜間に葉を食い荒らすウメケムシ(梅毛虫はオビカレハの幼虫)
がよく発生します。落葉期の冬剪定で、枝に産みつけられた卵のかたまりを見つけたら取り除きます。他にもカイガラムシ、アブラムシに注意していきます。
ウメ(梅)は梅潰瘍病や黒星病といった病気も発生することがありますので、風通しを良くし、過度な湿気を避けるよう剪定が欠かせません。
病気予防
ウメ(梅)はバラ科です。うどんこ病にもかかりやすく、春と秋の涼しい気候の時期に多く発生します。他にも、樹皮表面に寄生したカイガラムシが原因で発生するカビ「コウヤク病」、葉の細菌性の病気「かいよう病」にも注意していきます。
病害虫の被害を防ぐためには、樹木全体の定期的な観察とこまめに薬剤散布を行って予防をしていきます。
枯れてきたウメ(梅)の木
梅の悩みでよくお聞きするのは・・・、害虫のことです。花後に剪定をしないまま梅雨をむかえると害虫が大喜びで繁殖します。1匹や2匹の毛虫ならなんとかなっても数百匹になると駆除も大変な作業になります。梅の病害虫でお困りの際はぜひご相談ください。 広範囲にわたる大掛かりな作業も承ります。
山崎造園は、エクステリア(外構)工事・造園土木工事、庭の設計から施工、アフターフォロー、メンテナンス等、庭木の剪定・手入れ・年間管理も承っております。
主要地域 :造園工事も対応いたします!
兵庫県宍粟市内(一宮町、山崎町、千種町、波賀町)、姫路市、たつの市、揖保郡、佐用郡、神崎郡、朝来市、福崎町、他、高砂市、加古川市、太子町、相生市、赤穂市、加西市、小野市、加東市、三木市、西脇市、明石市、播磨町、稲美町、市川町、神戸市、他 近畿周辺 )
梅の木にびっしり付くウメノキゴケ(梅の木苔)
2025.02.01
梅の幹や枝に付く、白いコケ?カビのようなもの、これは菌なのか?何なのか?よく聞かれます。
「ウメノキゴケ(梅の木苔)」といいます。
ウメノキゴケは「梅の木」の樹皮に多く見られるコケのような白い葉状のもので、地衣類(ちいるい)の一種です。
庭園や公園では、ウメノキゴケが梅の木に付着して生育し、古木ならではの風情を引き立てる自然美をつくりだしています。ウメノキゴケが着生(ちゃくせい)した「苔梅(コケウメ)」は、長寿の証として「縁起がいい」とされています。
詳しくは山崎造園のブログ「梅の木を彩るコケ?カビ?ウメノキゴケ」の記事で紹介しています。
梅(ウメ)の美しさ、「疎痩横斜(そそうおうしゃ)」な枝ぶり
2020.02.22
梅(ウメ)の花がチラホラ咲き始めました。梅(ウメ)は、厳しい寒さの2月頃からほころびはじめ、1ケ月くらいかけながらゆっくりと満開になっていきます。
ウメは老木になると、「うねる」ような枝ぶりを見せてくれます。
中国のことわざで「疎痩横斜(そそうおうしゃ)」という表現があります。梅(ウメ)は永い月日の間、強風にさらされていく内に疎痩横斜(そそうおうしゃ)な枝ぶりになって行くという、梅の美しさを現した言葉です。
詳しくは山崎造園のブログ「「疎痩横斜(そそうおうしゃ)」な枝ぶり」の記事で紹介しています。
似ている花木 「梅・桃・桜」の花びら 見分け方
2019.03.05
春にかけて 梅、桃、桜 を見ることが多くなります。花を見て「これっ、桜? 梅? 桃?」迷ったことありますか?
梅は、先が丸くなっている。
桃は、先がとがっています。
桜は、先が分かれています。
詳しくは山崎造園のブログ「梅の花が満開」の記事で紹介しています。
「梅に鶯」(ウメにうぐいす)
2017.03.19
ウメ(梅)のことわざで有名な『 梅(ウメ)に鶯(うぐいす)』 は、美しく調和するものの例えに使われる表現ですが、目の周りが白い鳥は、鶯(うぐいす)ではなく「メジロ(目白)」です。
むかしの人が、梅に集まる「メジロ(目白)」を、「鶯(うぐいす)」と混同したことから、「梅に鶯」となったようです。
詳しくは山崎造園のブログ「梅と鶯(うぐいす)」の記事で紹介しています。
(ウメの年間管理)
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